中小企業のSWOT分析って?

#12 中小企業のSWOT分析って?

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ひょんなことから自動車部品卸業のYさんとお話しをしました。

Yさんの扱う商材は工業用ファスナーと呼ばれるプラスチック部品です。

工業用ファスナーとは部品をつなぐ「留め具」の1種で、Yさんの会社では主に自動車メーカーあてに販売をしてきました。

従来は金属製のボルトを留め具として使用するのが主流でしたが、自動車の軽量化の流れに乗ってYさんの扱うプラスチックファスナーの需要が自動車メーカーを中心に大きく伸びました。

一方でプラスチックファスナーへの新規参入企業も数多く出現し価格競争が激しくなりました。

商品単価は1個300円程度と非常に廉価な商品なので、販売数量をいかに確保するかが経営の重要なポイントとなります。

しかし同業者も同じように考えるため、大口の販売先である自動車メーカーあての販売は価格競争が激しく、数量確保には利益を削ってでも数を採る必要に迫られました。

 

そこでYさんが採った戦略は、自動車の製造過程での競争は避け、同じ部品を使う自動車修理工場をターゲットとした販売戦略を採りました。

 

自動車メーカー向けの販売は1取引先当たりの販売数量は大きくなりますが、新車製造過程におけるコスト削減要請はYさんの企業の仕入れ値とほぼ同じ程度まで下げなければ同業者に対抗できない水準にまでなっていました。

 

一方で自動車修理工場向けの販売は1取引先あたりの販売額は少量でかつ不定期であり売上数量を確保するには従来の自動車メーカー向けに比べ圧倒的な数の取引先を開拓する必要がありました。

 

しかし、Yさんの会社は小規模経営であり、それだけの新規顧客を開拓する人員もノウハウも備えていませんでした。

ではYさんはどうやって自動車修理業者の取引先を開拓したのでしょうか?

答えは、すでに自動車修理工場を顧客として持つ自動車部品卸業を新規に開拓したのです。

一気に自前で末端の修理工場を開拓する経営資源を持ってはいませんでしたが、従来の自動車メーカー向けで培った業歴と信用力から部品仕入先メーカーとの直取引が可能であることを武器に新規開拓活動を行ったのです。

新車と同スペックな部品の供給ができることは、自動車部品卸業者にとっても魅力となり、

部品卸業者の新規開拓の可能性は低くないと考えていました。

しかし現実は甘くありませんでした。

自動車部品卸業者側からも納入価格の引き下げ要請があったり、代替部品で間に合っているなど商品自体の仕入を拒まれたりと前途は決して明るいもではありませんでした。

脅威にどう対処したのか?

そこで、Yさんは営業を仕掛けている部品卸業者の顧客を調べ上げました。

そして部品卸業者の顧客であり工業用ファスナーのエンドユーザーである自動車修理工場への営業を行ったのです。

すると部品卸業者への営業とは違った結果がでました。

好感触な先が多く、当社商品の仕入を快諾してくれる先が次々と出てきたのです。

ところが、せっかく営業に成功したそれらの自動車修理工場との取引をYさんは取りませんでした。

その代り自分が営業を仕掛けていた部品卸業者からの仕入れを依頼したのです。

そして部品卸業者あてに複数の販売先顧客と一緒に自社商品のセールスをしたところ、当初は仕入に消極的であった部品業者が次々とYさんの会社との取引を申し出てきたのです。

そうです、あくまでYさんの会社の経営の最重要ポイントは販売数量の確保だったからです。数量確保にはやはりどうしても複数顧客を網羅する部品卸業者が必要だったのです。

 

またエンドユーザーへの営業活動から別の切り口を見つけることができました。

自動車整備工場ではバンパーの板金修理を受け付けた場合、バンパーを取り外し修理する必要がありますが、取り付けに必要となるプラスチックファスナーの在庫が無い場合には必要なプラスチックファスナーが届くまで、修理が終わらず修理車を保管しておかなければならなくなるのです。たった300円程度のファスナーが無いだけで、保管コストや代車を手配するコストなど大きなコスト負担が発生することが分かりました。

つまり、エンドユーザーの商品に対する1番のニーズは必要な時に必要な部品がすぐ手に入る事だったのです。

価格の大小は修理自体に3万円かかるなかで、ファスナーの部品交換代が200円か300円かは修理を依頼するほうも、修理するほうにに対しても大きな問題では無かったのです。

 

そこでエンドユーザーへの短納期を優先事項として、販売先を首都圏と名古屋圏に特化し商品配送網を効率化することで発注後翌日配送の体制を敷きました。

こうした活動が功を奏し、Yさんの会社は部品卸業者を数10社開拓し、末端の自動車修理工場の顧客を千社程度確保することに成功しました。

結果として、現在でも安定的に粗利率を40%程度確保したうえで一定量の売上達成しています。

 

中小企業にとってはニッチな商材がメジャーになると競争が激化し、逆に新たな売り方が必要となるのだということがわかりました。

そうした時にまず「どうやって」考えていけば良いか?

どこの企業でも1度は作った経験がある「SWOT」分析のフォーマットが役にたつのではないでしょうか。

S(強み)・W(弱み)・O(機会)・T(脅威)

今回のケースをSWOT的にまとめると

新規参入業者の出現による「脅威」を新たな販売手法開発の「機会」と捉えることで、自社の「強み」である仕入メーカーとの直取引を武器に、短納期を付加価値として、小体経営の「弱み」を克服する。という感じになるのでしょうか。

 

いずれにしても、考えるスタートは多分、“自分の強みは何か”ということを自らが理解することだと思うんですが、皆さんはハッキリ強みを断言できますか?

できれば多分答えはきっと出るでしょう。

 

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