最も社会主義に近い資本主義国の日本人が最も資本主義に近い社会主義国のベトナムへ行って感じた共通点とは?

 #18 最も社会主義に近い資本主義国の日本人が

最も資本主義に近い社会主義国のベトナムへ行っ

て感じた共通点とは?

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ひょんなことから、ベトナムへ出張する機会を得ました。

昼間の激しい日差しが嘘のように夜風が心地よい11月のホーチミンで孤軍奮闘するビジネスマンのK氏に出会いました。

K氏の仕事は、大手企業の駐在員として日系企業の現地での進出を支援することです。

日系企業にかわり現地企業との交渉や、マーケット調査や提携先への接待などを通じて信頼関係を築く業務は多岐にわたります。その仕事を一人でこなしているのです。

K氏はたったひとりで戦っていました。

K氏と一緒に既に進出している日系企業のいくつかのオフィスと工場の視察をしました。

道すがらベトナムでは韓国系企業のかんばんを多く目にする事になりました。

サムスン等韓国企業の進出度合が高いことを目の当たりにしました。

日系企業の進出は隣国のタイなどに比べまだまだの状況のようです。

日本のものづくり企業にとって人件費が安い東南アジアへの進出は加速しています。

従来の世界の工場としてだけでなく、進出国の内需を狙ったタイムマシン経営。つまり日本の高度経済成長時とおなじように、人々が豊かになっていく過程でかつて我々が経験したビジネスチャンスがまるでタイムマシンに乗って過去にタイムスリップしたように実現していくのです。

そこには大きなビジネスにおける成功要因を目にすることができるのです。

そうビジネスで大切な将来の予測ができるというものです。

これは国内で事業を行うのに対し圧倒的にビジネスを有利に展開できるアドバンテージとなります。

ベトナムでも今まさにタイムマシン経営が行われているようです。人々はこぞって農村から都市部へ移住しテレビ、冷蔵庫、を買い、さらなる高収入をめざし、子供に対しては教育熱心に塾通いさせるなど、一昔前の日本の生活動向を彷彿させるような熱気を感じました。

圧巻!朝のホーチミン市街

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まるで蜂の巣から一斉に蜂が飛び出すようなバイク(日本の原付バイク)の大群に遭遇することになりました。

道路はバイク、バイク、「バイクの列」で埋め尽くされています。信号は少なく、歩行者がその大群の隙間を狙って手際よく横断する姿はまるで曲芸のようなしろものです。

日本人は間違いなく道路を横断するのに躊躇するでしょう。

私はK氏の後を追うようにして一瞬できたバイクの列の切れ目を目指し、祈るような気持ちで道路をわたりました。

海外で報道される日本の象徴的なシーンとして「朝のラッシュアワー」があります。毎朝、満員電車から湧き出る人、人、人の混沌が世界の人々の興味を惹きました。

ホーチミン市街の朝の風景を目にしたときに私には「日本のラッシュアワー」の風景と重なりあう記憶が呼び起されました。

 

Kさんは言いました。海外進出で最も大事なことは、「ものをつくる前にひとをつくること」だと。続けて「ここベトナムにはそれがある」と・・・。

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ホーチミン市民の足は主にバイクです。

道にあふれんばかりのおびただしいバイクの列

一見無秩序にみられるが、注意深く見ているとあることに気が付きます。

「混沌の中にある何か明確な秩序」

明確な秩序を私に感じさせているものは何か?

ひとり、ホテルの窓から朝のホーチミンン市街を眺めていると

何かが一定の秩序を保ち、個々は別々かつ自由に動いているのですが全体として、よどみがなく、停滞せず、ゆっくりではあるが全体として統一された流れのような感覚を感じました。

おびただしい「バイクの列」、そこに自動車や歩行者が入り乱れ混沌とした風景を作り上げているのに交通事故が起きない状況。

バイクの列が続く大通りを通学用のバスが左折(いわゆる対向車線をまたぎ左折する日本の右折に相当します)するためにウィンカーを出しました。

それに気付いた対向車線のバイクは即座にスピードを緩め、バスに道を譲ります。

しばらくすると今度はバイクが左折をするためにウィンカーをだします。今度は対向車線のバイクはすぐに道を譲りません。その後左折待ちのバイクがもう一台連なったところで、対向車線のバイクが道を譲りました。

何かが分かったような気がしました。この秩序の鍵は優先順位にあるのでは?・・・

ベトナムでの道路における優先順位は①大型の車両やバス、②乗用車、③バイク、④歩行者の順になっています。

つまり、乗用車は大型車両に道をゆずり、バイクは乗用車に道をゆずる、歩行者はバイクの隙間でしか道を渡らない。

この優先順位があることで一見、信号などが無い交差点でも一定の秩序のもと交通の流れが滞らず流れることが可能となるのです。

左折信号がなくても乗用車が左折ウインカーを出せば、バイクの列は必ず停止して乗用車を通します。ある意味、左折車がなくても信号待ちするといった非効率な状況を発生させることなく交通が流れているのです。

速度も40Km以上は出さない程度で全ての車両が流れているので、こうした対応が取れるのでしょう。

規制やシステムで秩序を保つ手法は資金や仕組み作りに多大な時間と費用を費やします。

それ以外に無法地帯で資金や時間をかけずに秩序を生み出すものは、個人個人のモラルの高さであるのだと思いました。

日本でも朝のラッシュアワーの中で、整列して並ぶ姿や、降りるまで乗車しないといった一定の秩序。

混沌の中にある個々人のモラルの高さ、何か重なり合う部分が多く妙に好感がわいてくるのです。

モラルの高さをつくるもの

アリストテレスが言ったことばで、どんな優秀な政治システムを作ったとしても一国の国のレベルは国民のモラルの高さを超えることはできない。

いくらシステムや規制を立派にしたところで、それを運用する人たちのレベルが伴わなければ効果はでない。

裏返せば、国民のレベルが高ければ、システムや規制がなくても秩序の保たれた社会をつくることが可能なのだと感じました。

企業の経営においてもトップがどれだけ立派な経営理念や管理システムを敷いたとしても社員一人一人がそれを理解して運用できるレベルがなければ結果がでないのと同じです。

ではなぜベトナムではそれが可能となっているのか

それが何を意味するのかを考えてみました。

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まずベトナム人の生きることに対するモチベーションについて、経営学者マズローの唱える欲求5段階説に応じてあてはめてみます。

すると最下位である第1の欲求「生理的欲求」つまり生存の欲求にたいしては、

熱帯雨林に属し、温暖で水も豊富。作物の育成には事欠かない風土として食べるのに困らない土地柄から生まれながらにしてある程度の欲求は満たされている点があります。

次に第2の欲求「安全欲求」については、安全安心な暮らしがしたいとの欲求については、社会主義国であり、既に農業分野ではコーヒーの生産高についてはブラジルを抜き世界トップ、米の生産についても世界2位であるなど農業国としての基盤ができおり、農家の実家に帰れば何とか暮せていけるといった生活のセーフティネットがあります。

一方でドイモイ政策(刷新)から都会での仕事を通じたビジネスチャンスも用意されていることから、人々の安全欲求もある程度充足されているので結果的に治安も良好な印象を得ました。

さらに健康面では肥満が見当たらないことに感心します。ベトナム女性には太った人が少ない、主観ですがこれも摂生が聞いている一つの現象なのではと。

過去の歴史では虐殺を受けた経験から、平和を望む気持ちがいまの高齢者世帯に多く各家庭でのしつけに反映されているのではないかと考察します。

第3の欲求は「社会的欲求」集団に属したり、仲間が欲しくなったりという欲求です。

つるんで走るバイクの姿を朝夜関係なく見かけます。

とくに夜、おびただしいバイクが走る姿を注意深くみると、会話をしながらゆるく走る20代前後の姿をよく見かけました。

きくところによるとエアコンのまだ普及していないベトナムにおいて夜バイクで、仲間と走るのは夕涼みの方法でもあるのです。

第4の欲求「尊厳欲求」他社から認められたい、尊敬されたい

彼ら彼女らが、日本人を尊敬するのもその一つではないでしょうか。

最後の第5の欲求「自己実現欲求」とは自分の能力を活かして創造的な仕事がしたいと思う気持ち。

触れ合ったベトナム人の人から受けた印象は、

生きることにについての目標がせかせかしていないことがあげられます。

既に第3の欲求までは多くの人々が満たされているのではと感じました。

実は欲求のレベルで考えたら、私たち日本人も同じレベルなのかもしれません。

Paper lanterns in Hoi An

 

2014年11月3日にはベトナム教育省から学校の宿題禁止令がでるほどの勤勉な国民性は意外と知られていません。

最も民主主義に近い社会主義の国ベトナムは最も社会主義に近い民主主義の日本に近いのではと感じました。

社会の制度は違えども、人々の価値観は日本に近いのではないかと。

ベトナムは唯一戦争でアメリカ合衆国に勝利した国。→我慢強い。

韓国に大虐殺受けても訴えを起こさない。→許す価値観。

一方で中国文化の影響を色濃く受け、儒教の教えが浸透している国です。

個の主張をする一方で集団の絆を非常に大事にするということです

ベトナムの人には、やはり何か共感するものがあります。

 

Kさんの言う「ものをつくる前にひとをつくる」

この土台ができているベトナムの今後の発展の可能性は高く

価値観が近いベトナムは我々日本人のパートナーとして今後最も大切な関係を築いていける国であると感じました。

 

<ベトナムの概要>※2013年度データ

人口:8,971万人:ハノイ693.7万人、ホーチミン781.8万人(2013年)

面積:33.1万キロ㎡(九州を除く日本の面積に相当=日本の0.88倍)

民族:キン族(約90%)

宗教:仏教(80%)

言語:ベトナム語

政治体制:社会主義共和制

名目GDP:1,902USD/一人当たり

経済成長率:5.4%(2013年)

日系企業数:1,299社

日系企業投資:285件(2011年)、444件(2012年)、500件(2013年)

 

 

 

 

 

 

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