中小企業の自社株対策

#6 中小企業の自社株対策

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ひょんなことから税理士のKさんに中小企業の自社株対策のポイントを聞くことができました。

2015年からは個人の相続税の最高税率が50%→55%に増税されることが決定しました。(2015年1月から相続財産6億円超の部分)

個人のそれも富裕層に対する増税です。特に中小企業のオーナーにとっては頭の痛い問題です。

なぜなら、優良な中小企業のオーナーにとって、自社株は財産の大きな部分を占めますが、

相続で子が自社株を引き取ったとしても、流通性の乏しい非上場株式を換金する方法は難しく、

経営権の観点からも、換金して相続税を支払うことが難しいのが現実です。

そうした事情から、優良企業であればあるほど世代交代や相続時の準備として自社株対策が必要となります。

つまり自社株の評価を引き下げ、できるだけ納税負担を減らす作戦が必要となるのです。

では、非上場株式である中小企業の株価はいったいどうやって時価評価を算出するのでしょうか?

イメージとしては

個人営業に近い小さな会社は会社の総資産から負債を引いた純資産の額が株式の評価額となります。

これを純資産価額といいます。

会社の規模が大きくなるにつれて、上場企業の中で類似した業種の平均株価と比較した株価が評価額となります。

これを類似業種比準価額といいます。

純資産価額による評価額を引き下げる方法で良く使われる方法

純資産価額による評価額を引き下げる方法で良く使われる方法は借金をして賃貸アパートやテナントビルなどを購入する方法です。

株価が引き下がる仕組みは1億円の借金(負債)でテナンントビル(資産)を購入した場合、

株価評価上は借金は1億円の負債となりますが、テナントビルの評価は取得価額ではなく、固定資産税評価額の8,000万円の資産となります。

このケースで見た場合には、「8,000万円の資産-1億円の負債=純資産はマイナス2,000万円」となり、純資産の引き下げ効果により株価が引き下げられるわけです。

つまり、借金(負債)の額は現実の金額と変わらないが、ビル(資産)の額は実際と計算上の価額が変わることを利用しているわけです。

資産の実際の価額と計算上の価額の差が大きければ大きいほど、株価の引き下げ効果が出ます。

最近都心の超高層マンションが良く売れる背景にはこの実際の価額と計算上の価額の差があるといわれています。

世帯数が多く土地の一人あたり所有分が小さい超高層マンションの固定資産税評価額は実際の取得価額とのかい離が大きく、純資産価額の引き下げに大きな効果を与えます。

一例では1億円で購入した都心の超高層マンションの固定資産税評価額が2,500万円となったケースもあるそうです。

相続税の増税方針発表以降、個人富裕層や中小企業オーナーの超高層マンション購入が増加したのだと言われるのも納得できます。

ただし、ここで気をつけなければいけないのは、資産の評価額は資産の取得後3年間は

取得時の価額=実際の購入金額とすることが法律で定められており、取得した日から3年間は価額が引き下がらないことに注意しなければなりません。

これを忘れるとせっかくの作戦が水の泡となりますので、不動産屋さんや銀行さんの言うことだけでなく、税理士さんへも確認をとることが大切です。

類似業種比準価額を引き下げる方法

2013年はアベノミクスの効果から日経平均が大幅に上昇しました。

類似業種比準価額のもととなる、比較する上場株式の平均株価には前年の平均値が使えます。

つまり2013年中に事業承継などで株式を譲渡する場合には

現在より株価の低い2012年の上場企業の平均株価をもとに算出すれば良いことになるので、今年中に自社株を譲渡する経営者が多かったと聞きます。

一方で今後の株価引き下げの対策として最も効果があるのは、利益を引き下げることです。

かといって本業で赤字を出しては事業継続の観点から本末転倒です。

よく使われる方法は特別損失を計上する方法です。

具体的にはオーナーへの役員退職金の支払いによる損失計上や法人所有の含み損のある不動産(本社屋など)をオーナーへ売却し損失を計上する方法です。

ここで知っておくと良いポイントは

類似業種比準価額の算定における利益には納税者に有利なように特別利益は利益には算入しないということです。自社株対策上、特別損失は考慮しますが、特別利益は気にしないで良いということになります。

もう一つはグループ納税制度によりグループ内の企業間の譲渡損は認められないが、法人→個人への譲渡損は認められるということです。ただし譲渡の理由が株価引き下げだけでなく、現役を引退したオーナー個人の家賃収入を確保する目的など実質的な譲渡理由がある場合に限るということです。

以上、本日税理士の先生から教えていただいたことをまとめてみました。

約1,000兆円の借金を抱える日本で生活していく中で

税金の知識は、知っているか知らないかで大きな差がでるということを改めて感じました。

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